2 名探偵
家人は寝室のドア枠に寄りかかって、再び体に巻き付けたミイラ布団から首だけを出して、たたずんでいた。
その視線は不安そうであると同時に、これから起こることへの期待の為に輝いていた。視線の先は「事件現場」である。
床に落ちたコンセントの周りはチョークで丸く囲んであった。
そしてその傍らには、それを見下ろす小さな一人の男がいた。
男の名はごまである。
名の知れた名探偵であった。この家に長く住み、夜な夜な俳諧しながら深く物思いに沈み、時々違法におやつを拝借していた。
そのような無頼な男である。
探偵はしゃがみこんで、桃花色と珈琲豆色の肉球で床をなぞったり、這いつくばって鼻をクンクンしたりしていた。コンセントから続くコードは四つ足のアンティークチェストの下を通りオイルヒーターへと続いていた。チェストの上にはプリンターが置いてあった。
探偵はチェスト下にもぞもぞと頭から潜り込み、体の半分まで入れた。その時、しましまのしっぽが左右に素早く振れた。探偵はしばらくそのまま動かずにいたが、やがて手だけをぬっと外に突き出した。
家人はそれを見るやいなや、布団を引きずりながら歩いていき、探偵の要求するものを手渡した。２種類のカリカリである。
しばらくして探偵はチェスト下から這い出てきて、険しい表情でカリカリをポケットにしまった。
それから家人に向かって住人を寝室に集めるように命じた。
召しだされたのは家人を含めた次の3人である。
①家人
ものぐさなミイラ怪人であり、名探偵ごまの召使である。ぜん息持ちの為、部屋の清掃には気を配る。
②たろ
性格はマイペースでよく眠る。好きなカリカリはロイヤルカナンFHN。パンと珈琲には一見識がある。みつとは姉妹である。
③みつ
好奇心旺盛だがとても繊細な性格。好きなカリカリはシーバデュオシリーズ。美容家電好き。たろとは姉妹である。
容疑者は揃った。
この中の誰が？
3につづく
名探偵ごま
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