Blanc Noir Cinnamon

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オイルヒーター事件 4 犯人

 

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4 犯人

 

探偵は思案顔でゆっくり歩き回りながら推理し始めた。

「考えなければならないことは2つある。1つ目は、なぜロイヤルカナンがそこにあったのかということ。そして2つ目はそれによって何が起きたのかということです。前者に関しては目撃でもしなければ答えることは難しい。だが、2つ目については我々は推理することが出来るはずだ」

「やってみよう」探偵は自分の奥深くにある何かを捉えようとしていた。

「ふむ。まずロイヤルカナンがあって、そしてコンセントが抜かれた。この2つの事実を結びつける出来事から、こうは考えられないか」

「ロイヤルカナンがあり、そしてそれを何者かが見つけたとする。それを獲得しようと手を伸ばしたりもがいたりしているうちにコードが引っかかって…」

みつが結論を引き継いだ。

「抜けてしまった…」

「ふむ。因果関係が成立する」探偵が言った。

家人がたろを見つめた。

「ということは、犯人は、ロイヤルカナンが好物である、たろという可能性が高い」

すると、たろはまるで戦車のようにゆっくりと首を回して一人一人の顔を見ていった。

そして最後に探偵の顔に戻ってきて、間の抜けた声で答えた。

「ぼく、やったよ」

 

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静寂が続いた。

誰もが結論を飲み込む為の時間が必要だった。

 

その緊張を破ったのはみつの声だった。

「その下にロイヤルカナンを入れたのはわたしなんです」

驚いた一同はたろからみつへ、銃弾の速度で顔を移した。

「それはどういうことですか、みつさん」

「ご説明願います」

探偵は慇懃に言った。

「実はピーマンがシーバデュオを買い忘れた時に、ロイヤルカナンを食べたんだけど、お皿から1粒こぼれてしまって。それをなんとなしに手で弾いたりしたら、楽しくなって、まあ猫の本能というのでしょうか、そのまま遊んでいたら、あのチェストの下に入ってしまいました」

「なんてことだ」

家人は憤慨して言った。

みつは恥ずかしそうにしたが、しっぽを膨らませてすぐに反論した。

「でもシーバデュオを買い忘れたあなたが悪いのよ」

 

「諸君、静粛に」

「これでこの事件は、関係者全員が関わっていたということになりますな」

そして探偵はたっぷりと間を取ってから言った。

「だが、この事件にはもう一人犯人がいる」

「犯人はもう間もなく到着するはずです」

 

その時、たろの耳がぴんとなって入口の方に向いた。

そして急に立ち上がりベッドの上に飛び乗った。

遠くの方から何かが近づいてくる音がする。

 

ウィィィィィィン

ウィィィィィィィィン

 

「いくら、たろさんがもがいたからといって、コンセントが抜ける程の力が加わるとは考えにくい」

 

ウィィィィィィン

 

「もっと力が必要なんだ」

 

ウィィィィィィン

みつがピーマンの布団の中に身を隠した。

 

ウィィィィィィィィン

「もっと強力な力が!」

 

ウィィィィン

ウィィィン

ウィィン

 

「これが事件の真犯人です」

 

入口から入ってきたのは

ロボット掃除機だった。

 

「ある出来事は一つの要因からは生まれない。出来事は、要因が別の複数の要因と重なって発生する。まるで超新星が爆発して星が生まれるように」

「時系列は分かりませんが」

こう前置きして、探偵は壁に掛けてある黒板に経緯を書こうとした。しかし手に持っていたのはカリカリで、慌ててチョークに持ち替えた。

「失礼しました」

 

『ピーマンがシーバを買い忘れた』

                         ⬇︎

『みつがロイヤルカナンをチェスト下に入れてしまった』

                         ⬇︎

『ピーマンがチェストを手前にずらして、壁づたいにあったコードが弛んだ』

                         ⬇︎

『たろがロイヤルカナンを見つけて取ろうとした時にコードをさらに床の手前側に移動させてしまった』

                         ⬇︎

「そして最後に」

ここで探偵はチョークで黒板をコツンとした。

『ロボット掃除機がコードを強い力で引っ張ってコンセントが抜けた』

「これがこの事件の真相です」

そう言って探偵はチョークを置いた。それからカリカリをポケットから取り出すと、「カリッカリッ」と軽やかな良い音を立てて食べながら部屋から出て行った。

やがて残された3人も各々の面持ちで部屋から出ていき、寝室ではロボット掃除機だけがまだ掃除を続けていた。

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名探偵ごま

 

物語に出てきたルンバについて

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