Blanc Noir Cinnamon

すべての猫好きのためのちょっと不思議な猫ブログ

Prologue(ごまのはなし 1)

 

ぼくが生まれたのは港町

空までそびえたつビルヂィングの不動と

どこまでも広がって揺れ動く海の碧の間に

かもめ君たちの元気な声と色んな種類の静寂との間に

ぼくは生まれた

たくさんの路地の向こう側に続く冒険と

一歩踏み出す勇気

少し曲がったしっぽの先の不安定さと

そして包み込む母さんのぬくもりの記憶に

ぼくは目を閉じて

まぁるくなる

 

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1歳半の時に里子に出て、ぼくはあいつの家に来た

バッグに入れられて

親しみのある人たちの手から離れて

見知らぬ人の手に渡る

新しい家に着くと、あいつは指示を受けて

そそくさとぼくに水を差し出した

それがあまりにも大きすぎる鉢だったから

みんなが笑った

あいつは照れた顔をしてぼくを見ていた

それから35日間、ぼくは口を利いてやらなかった

 

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でも勘違いしないでほしいのは

口を利かなかったのは怒っていたからだけじゃない

もちろん腹立たしかったし

悲しくて不安だったけど

ぼくは赤ちゃんじゃないし

お兄ちゃんやお姉ちゃんも

こういった経験をしていたから分かっていた

 

ぼくが黙りこくなっていたのは

家や家族から離れたり

それら足元の土台が不安定な状態になって

ぼくは深く考えるようになっていたからだ

ぼくっていったい何者なんだろうと

こうしてぼくはぼくの内側に降りていく

それからしばらくの間は

新しい家の開拓と

この内側に巣くう謎の解明の為に

ぼくは真夜中にうろうろと歩きまわった

 

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