3 推理
寝室に集められた3人の様子はそれぞれ違っていた。
一番最初に到着したのは「みつ」であった。足早に寝室に入ってきて、かなり憤慨した様子であった。彼女は落ち着こうとして背中あたりの毛を何度も舐めて整えていた。次は家人だが、容疑者の一人であると知った時には、かなり動揺し、ミイラ布団から出ている顔は真っ青であった。最後にやってきた「たろ」はいつもと変わらずにのそのそ歩いてきて、ベッド脇においてあった丸い爪とぎに、まるでそこが最初からの目的地であったかのように一直線に向かって、その中に腰をおろした。
「お集まりいただきました皆さまには大変恐縮に存じます」
探偵が演説を始めた。
「諸君にお集まりいただきました理由はすでにお聞きおよびであると思います」
「しかし僕は、被害......」家人がたまらず口を挟むと、探偵は肉球を向けてすぐに遮った。
「先刻、そこのピーマン(家人のこと)から訴えがあった。誰かがオイルヒーターのコンセントを抜き取り、凍え死にしそうになったと」
「この事件の問題点は2つある。いったい誰が、このピーマンを凍え死にさせる為にコンセントを抜き取ったのか?そして、もう一つは根本的な問題として、コンセントが簡単に抜き取れる状況にあった事実が存在したということである」
そう言った後、探偵はみつの方に歩み寄った。
「みつさん、あなたは先日、このピーマンがあなたの好物であるシーバデュオを買い忘れたことに腹を立てていましたね」
みつは体をよじって一度背中の毛を舐めてから、向き直って話した。
「確かにわたしは怒っていたわ。だってシーバデュオの外側のカリっとしたところとその中から染み出すクリーミーなところ、それを噛んで合わさった時の美味しさっていったら他にはないものなんです」
「だからといってコンセントを抜いたりしないわ」
家人は申し訳なさそうにして、
「在庫を確認し忘れてしまって......」
「ですが僕が疑われているのはなぜでしょうか?僕は被害者ですよ」
探偵は威厳を正して言った。
「ピーマン殿、あなたはとてもものぐさだ。今の話からもあなたは確認を怠りがちである。スイッチを入れた時にあなたはONのランプが付いたのをちゃんと確認しましたか?」
「いや、あの、習慣というもので、スイッチを入れたら付いているものだと......」
家人は弱々しく答えた後、力強く言い放った。
「しかし僕がコンセントを抜いていないことは明らかだ」
そういうと探偵はチェストを指さし、
「チェストの上にはプリンターが置いてありますな。プリンターの背面に用紙をセットする時に、あなたはプリンターを手前に動かすでしょう?用紙のトレーが壁に近すぎて紙をうまくセットできないからだ。いつもはそのように使っていた。ところがだ、あなたはそれが面倒くさくなり、壁にぴったりつけて置いていたチェスト自体を手前に動かした。そうじゃありませんか?」
「あっ」と家人は言った。
「チェスト下に潜った時に、カーペットに付いたチェストの足のくぼみの位置がずれていたのを確認した。動かしたことは一目瞭然である。その時にコードが引っかかってコンセントが抜けたのかもしれません。どうでしょうか?」
家人はまさにピーマンのように顔面が強ばって黙ってしまった。
「最後にたろさん」
名前を呼ばれ、たろは爪とぎの中で声がする方向に耳だけを向けた。
「あなたには動機も、それから、そこの干からびたピーマンのようなミステイクの懸念も見つけられなかった。だから当初はあなたを容疑者から排除していた」
「ところがです。チェスト下に潜った時に、もう一つの証拠品を覚えず発見したのです」
そういうと探偵は右手をポケットに突っこむと2種類のカリカリを取り出した。
「一つはみつさんの大好物のシーバデュオ。そしてもう一つが、たろさん、あなたの好きなロイヤルカナンFHNです」
食いしん坊のたろは顔を上げた。
「それがどうしたのですか?」
みつが代わりに答え、たろはうんうんとうなづいた。
探偵はなだめるように肩をすくめてから、
今度は左手でポケットを探り、もう一つのカリカリを取り出した。
「これがチェスト下から出てきたのです」
それは、たろが好きなロイヤルカナンFHNであった。
犯人はまさかの......
次回ついに完結!
わたしじゃなーい!(容疑者みつ) ※足(容疑者ピーマン)
呼んだ?(容疑者たろ)
カリカリは一か月分をまとめて購入します。
翌日発送なので
いつもAmazonで購入しています。
たろが好きなロイヤルカナンFHNです。
優れた栄養バランス、噛み応えのある大きさ。
インドアキャット用です。個人的な感想ですが
便臭も抑えてくれる気がするにゃ。
みつが好きなシーバデュオ。
味は色々あります。総合栄養食。