Blanc Noir Cinnamon

すべての猫好きのためのちょっと不思議な猫ブログ

ごまのはなし 2

 

にほんブログ村 猫ブログへ

 

新しい家に来た時には

その家のことを知る必要がある

だからとにかく調べまくる

ここは安全な場所なのか、敵はいないか

トイレはどこか、ご飯の場所は?

何かに出くわした時に隠れるところ

住人の数、他の猫はいるのかとか

でも一番大事なのは

安心して寝られる場所を確保すること

それでぼくが夜中に調査して見つけたところ

それが机の裏側

机と壁の僅かな隙間

ここは完全確実に安心できた

旗を立てて世界中の人たちに

ここはぼくの場所だって宣言したいくらいだ

未開の地にやってきて初めて獲得した土地だ

それでぼくは机を爪でひっかいて印をつけた

これなら誰かがあとからやって来ても

ここはぼくの場所だって言うことができる

こうして長かった一日は終わり

ぼくは新しい家での初めての朝を迎えた

 

あいつは朝起きるとすぐにぼくを呼んだ

ごま〜ご飯だよ〜って

でもぼくはこの家のことを

全部確認できた訳じゃないから

しばらくは机の裏側の

ぼくの土地に留まることに決めていた

ほとぼりが冷めたらここから出て

探検を再開するつもりだ

そうしているうちに

あいつの声の調子が

だんだん変わっていくのが分かった

ぼくを探しているみたいだ

家の外にまで探しに出かけた

あいつこそ探検家だなって思ったけど

泣きそうになって帰ってきて

父親の会社にまで電話して

ぼくが外に出なかったか確認して

あいつ自身も仕事を休む連絡をしていた

何だか可哀想になったきたな

ひと声かけてここにいるよって

知らせてあげたいな

でもどういう訳か声が出なかったんだ

口を開けて声を出そうとしても

ただ少しばかり空気が漏れるばかり

寝ている間に声を盗まれたのかな

それかクシャミをした時に

声を出すカラクリ部品の一つが

喉から飛び出してしまったのかな

空気がひゅーひゅーするだけだった

お腹が空いてきた

母さんやお兄ちゃんたちはどうしているだろう

前の家の人たちは

あの男の子は

その時に頭の上から声がした

ごま〜そこにいたのか

あいつが机の上から覗いていたんだ

涙でぐしゃぐしゃになった顔をして

それを見たら

ぼくは何だかとても嬉しくなって

ほっとしたんだ

あの時のあいつの顔っていったらね

それはぼくのずっと忘れられない

大切な記憶

今日はそんなお話

 

f:id:BlancNoirCinnamon:20220227113139j:image

 

 

 

 

にほんブログ村 猫ブログへ
にほんブログ村